「なぜ広告なの?」と問い返す異色の中小企業診断士
プラントエンジニアから中小企業診断士へ——。一見すると畑違いのキャリアチェンジですが、すべてが繋がっています。「僕がやっているのは中小企業の事業開発支援です。でも正直、自分自身何やってるのか分からなくて(笑)」——そうは言うものの、アプローチは極めて論理的で実践的です。
当たり前を疑う「課題再定義」のプロ
「お客さんから相談いただいたことをそのまま回答しない方がいい」——これが僕の仕事哲学の核心です。
経営者から「マーケティングに困ってるんだよね。広告運用の相談に乗ってくれない?」と言われても、広告が打ち手になることはほぼありません。一番に返すのは「なんで広告なんですか?」という問いかけ。そこから抽象度を上げて、本当に解決すべき課題を一緒に見つけていきます。
契約前に5〜6回面談する理由
多くのコンサルタントがすぐに契約を急ぐ中、契約に至るまでに5〜6回の面談を重ねます。「課題のすり合わせにめちゃくちゃ時間使ってるんですよ」なぜか?それは中小企業の現実を知っているから。「資金繰りで困ってる会社をめちゃくちゃ目にしてきて、無意味な設備投資や人件費で潰れちゃってる会社を見てきました」——だからこそ、あんまりお金を使わずに最短ルートで目標に到達できる方法を一緒に考えることにこだわるのです。
総合格闘技のような気持ちで挑む事業開発
支援内容は多岐にわたります:
- マーケティング支援
- 財務改善・資金繰り最適化
- M&A企業評定
- 事業戦略立案
「サッカーやってますとか野球やってますみたいなものじゃないので、事業開発支援という呼び方をしています」特定の手法にこだわらず、その会社にとって本当に必要な解決策を見つけ出す。それが僕のスタイルです。
3回打席に立てる計画を作る
中小企業のマーケティングでよくある失敗——それは「一発で当てなければならない」という思い込みです。「野球選手で優秀なバッターでも3割じゃないですか。7割は失敗するんです」——「絶対に最初の打ち手は失敗しますよね」という前提で、失敗しても継続できるような体制づくりを重視しています。これこそが「凡事徹底経営」——継続ありきで挑戦し続ける枠組みを作ることなのです。
「上司を連れてこい」と言われた屈辱
高校3年生のとき、プロサッカー選手を目指して毎日練習に明け暮れていましたが、「自分自身が大したことない選手だ」ということを認めなければならないタイミングが来たんです。そんな時、父親に見せられたのは、ボーイング787の初飛行式典の動画。父がリードエンジニアとして関わった、炭素繊維をボディに採用した初めての飛行機だったんです。「ビジネスの世界も面白いよ」——父のその一言で、「おお、なんか俺、次こっちに熱中しよう」って思えたんです。
人生初の挫折体験
プラントエンジニアリング会社に入って、ヨーロッパのベンチャー企業とアライアンスを組む新事業の担当になったとき、初めて大きな挫折を味わいました。向こうの技術者って、みんなビジネス語れるんですよね。財務諸表を隅々まで読み込んで、経営戦略を空で言ってる。
「上司連れてこい。松尾と話してても話が進まんから」——そう言われた時の悔しさは、今でも忘れません。
30万円の賭けが人生を変えた
財務の勉強をしたいと思ったんです。でも本を読んでもよくわからない。色々調べてたら、中小企業診断士っていう資格に行き着いて。「30万振り込んだら、なんか分かるようになるらしい」って。シラフの状態だと振り込めないんで、週末にちょっと酒飲みながら、えいってポチったんです(笑)。
診断士の勉強が、めちゃくちゃ楽しかったんですよね。社会経験を積んだ人であれば、「あん時なんか製造部門の部長こういうこと言ってたよな」とか、実体験と結びつくんですよ。点と点がめちゃくちゃ繋がる感覚。
中小企業支援の魅力に取り憑かれる
資格を保持するには、5年間で30日間の経営支援をしなければならない。だからみんな副業で中小企業支援を始めるんですけど、そこで扉を開いちゃったんです。自分が動くことによって、会社全体がぐわっと引き上がる感覚。そのやりがい、反応がすぐ帰ってくることの魅力に触れてしまいました。
日本の中小企業を変えたい
最終的には、こんな世界を作りたいんです。どの会社も税理士さんがついてますよね。でも診断士って「1企業1診断士」になってないんですよ。そういう世界観を作りたい。全企業がきちんとした凡事徹底経営をできていれば、日本のGDPって2倍3倍を目指せると思ってるんです。
技術者時代も今も、結局やってることは同じ。ゼロベースで設計して、複雑なものの辻褄を合わせる。ただ、対象が変わっただけ。でも今の方がずっと面白い。